散 文 創 作 物

９２年から、毎年１、２本のペースでゲイの小説をいくつかの雑誌に発表してきました。

ですが、残念なことに発表していた雑誌が、次々に廃刊になってしまい、今ではもう読むことが

できません。ただ、幸いに雑誌社との著作権が消滅したので、時間を見ながらここに

「作品達」をＵＰしていこうと思っています。それまでの間、一応リストを載せておきます。

　玉上謙介名義

１.Ｇｏｏｄ　Ｂｙｅ，　Ｍｙ　ｂｏｙ-------「アドン」９２年１０月号　　イラスト　武内　条二さん

小説本文へ

　ｎｏｔｅ-----うれしはずかしデビュー作。舞台は何と京都とニューヨーク。（おぉ大胆）
　　　　　　　丁度、ニューヨークに行って、あっちこっち歩きまわって帰ってきた直後で、それを
　　　　　　　なんとか生かせないかな、と思って書いた。冒頭のシーンで登場するカフェは、お気に入り
　　　　　　　だったブロードウェイ沿いにあった実在の店。あらすじは、以前付き合っていた同士が
　　　　　　　紆余曲折があってニューヨークで再会するという、ドラマチックな（本当かよ。）
　　　　　　　仕立て。京都の寺は、座禅会で行った洛西の天龍寺がモデル。


２．Ａｆｔｅｒ　ｔｈｅ　Ｇａｍｅ-------「アドン」９３年７・８月号　　　イラスト　武内　条二さん

　ｎｏｔｅ-----高校生のハルキくんは、学校では、水泳部員なんだけど、夜は「ウリ専」をやってたりもする子。
　　　　　　　高校の時期ってさ、ボクは一体何をしたらいいんだ、って悩みだしたら、どうしようもない時期じゃない？
　　　　　　　自分の存在すらどうしようもなくてさ。持って行き場のないドロドロを抱えててね。そういう部分を
　　　　　　　書きたくて、テーマに据えてみた訳。あ、ハルキって言っても、ムラカミハルキとは関係ないからね。


３．Ｄｉｓｔａｎｃｅ-------「アドン」９４年３・４月号　　　イラスト　武内　条二さん

小説本文へ

　ｎｏｔｅ-----文字通り遠距離恋愛がテーマ。遠距離恋愛を成立させる要件って、お互い、相手に対する
　　　　　　　情熱の高さをそろえることと、相手を信じることなんじゃないかな、って思う。友達に
　　　　　　　「どうやったら、遠距離恋愛って成立するの？」って聞かれたからさ、こういうことなんじゃ
　　　　　　　ない？っていう俺なりのひとつの回答として、この小説を書いてみたんだ。


４．Ｌｏｎｅｓｏｍｅ　Ｈｉｇｈ−ｓｃｈｏｏｌ　ｂｏｙ　-------「アドン」９５年７・８月号　　　イラスト　平　弘徳さん

　ｎｏｔｅ------俺は、あいつが好き。でも、あいつは別の奴が好き。人生は不条理。どうしようもなくってさぁ。そんな
　　　　　　　どうしても伝わらない想い、切なさ、がテーマ。掲載されて喜んだはいいけど、この直後アドンが休刊に
小説本文へ　　なっちまった。やれやれ。こっちも不条理。
　　　　　　　　この作品で、主人公が電車の中で痴漢に遭う、という部分があるんだけどさ、それは実話。この話を書く
　　　　　　　ちょっと前に用事で九州に行った時、西鉄電車の中で、俺、そういう目に遭ったのな。その時のことを
　　　　　　　客観視して書いていった。自分の悲惨な体験をネタに原稿書けるようなタフさがなきゃ、小説なんか書け
　　　　　　　ないんだぜ。
　　　　　　　　まぁ、友達連中には一番評判がいい作品かな。さわやかなんだって。（フフフ）　で、期待して作者に
　　　　　　　会ったら詐欺だって。（放っとけ）イラストレーターの平さんが主人公の顔を俺のイメージどおりに
　　　　　　　描いてくれた。あんまり気に入ったから、しばらく持ち歩いていた。テメェの小説のイラストだもん。
　　　　　　　大事にしたいのは当然だよな。
　　　　　　　　しかし、今気がついたけど、アドンの掲載分って、全部英文タイトルだったんだよね。


　　五十崎銀次名義　「いかざき　ぎんじ」って読みます。略して「いか銀」。まぁ、いかさま銀次でもいいんだけどさ。


５．蔵の中　-------「さぶ」９５年８月号　　　イラスト　野上義隆さん

小説本文へ

　ｎｏｔｅ------編集がつけてくれた文字通りのサブタイトルが「監禁ＳＭ」。なんせ「さぶ」だからさぁ、何たって
　　　　　　　やっぱＳＭだぜ、って思って書いたのがこれ。宅急便のバイトの大学生の兄ちゃんを蔵の中に閉じ込めて
　　　　　　　いたぶる、という話。ＳＭっていうのは、本来相手が優位にたつはずのところをわざと貶めて、自分は
　　　　　　　そうじゃないところに居て、そうしていたぶって相手の反応を見るか、逆に自分が貶められた悲惨な立場を
　　　　　　　味わってドキドキする、というわけで、意識構造としては、そう複雑じゃないし、一回書いたら、だいたい
　　　　　　　分かっちゃう。後は、シチュエーションをいかに自然に持ってくるか、の問題だけでしょ。


６．かんちゃんのこと　-------「さぶ」９７年５月号　　　イラスト　越後屋辰之進さん

　ｎｏｔｅ------その頃、俺とよく小説の話をしてたＹさんっていう人妻がね、小説の中に「さくら」の花を出して欲しい、
　　　　　　　てリクエストをしてきたんで、「さくら」を作品の中に入れたのがこれ。基本的にはこれまた高校生のさわやか
　　　　　　　路線かなぁ。しかし、主人公のひとり、かんちゃんを最後に殺してしまったんで、ホンマ残酷な奴やな、って言われた。
　　　　　　　越後屋さんは、そんなお葬式の場面をうまく描いてくれた。あんまりうれしかったんで、ありがとうございました。
　　　　　　　ってお礼状出したら、何と返事が来て知り合いになってしまったんだよ。


７．蔵の中（再録）　-------「ロマンジュネ」９７年１２月号　　　イラスト　榎本由美さん

　ｎｏｔｅ------俺が二重投稿したのではなくて、「さぶ」の編集が「ジュネ」に使えそうだ、というので回したらしいの。同じ
　　　　　　　出版社だからね。けどさぁ、「ジュネ」は紀伊國屋書店にあるんだけど、「さぶ」は置いてないんだぜ。なぜ？
　　　　　　　（梅田の旭屋書店の本店にはあったけど。）ところで、「ロマンジュネ」の表紙に載ったテメェの名前をさぁ、紀伊國屋
　　　　　　　書店の店先で見つけて、ポッと顔を赤くしていたのは、この俺だったんだけどね。


８．二人　-------「さぶ」９８年７月号　　　イラスト　木村べんさん
　　　　　　　
　ｎｏｔｅ------セックス依存症の奴が、ハッテン場に出かけたり、秘密クラブでＳＭショーに連れ出されたりと、危険な目に
　　　　　　　遭いながら、自分を見つけて立ち直る、という話。ここのところ、「依存症」というのが俺の小説のテーマになって
　　　　　　　いるんだ。小説につくイラストはいつも雑誌の編集担当さんがアレンジメントするんだけどさ。俺の場合、いつも
　　　　　　　絵のうまいレベルの高い方に描いていただいて、とてもうれしい。今回のイラストは、何と木村べんさん。送られて
　　　　　　　きた掲載誌を見て、思わず「ウワォー」って言っちゃった。


９．一夜の夢　-------「さぶ」００年４月号　　　イラスト　犬飼隷二さん

　ｎｏｔｅ------いつも行く、フィットネスクラブで僕は央介に会った。最初は、アイ・コンタクトだけだったのに、気がつくと
　　　　　　　央介は僕の大切な奴になっていた。しかし、そんな時、央介は急に姿を消してしまった。いぶかしく思っていた数ヶ月
　　　　　　　後、奴はまたあらわれた。すっかり変わり果てた姿になって。病が彼を蝕んでいたのだ。僕は、必死で彼をつなぎとめ
　　　　　　　ようとした。しかし、彼は-----という話。舞台は、俺が週３回通ってる近所のエグザス。（何とまぁ、お手軽。）
　　　　　　　下読みしてもらった友人に「オマエさぁ、また登場人物殺しちゃったね。」って言われてしまった。その後「さぶ」
　　　　　　　休刊。


表 紙