小説 蔵 の 中
１．
「チワー、村田さん、荷物でーす。」
山野智は、汗を拭いながら、その広い家の中に向かって叫んだ。中は静まりかえったままだ。
むしろ、外の蝉の声の方がうるさい。
その家は、集落から離れた山の入り口に、ポツンと一軒だけある、古い農家を改造した家だった。
「村田さーん」智はもう一度叫んだ。（チッ、こんな山の中まで、まーた来なくちゃなんねえのかよォ。）
と思いはじめた時、ようやく奥のほうで人の気配がした。
「はい」四十過ぎ位の男が廊下に首だけ突き出した。そして智を認めると、ゆっくりと大股で出てきた。
「あのう、荷物です」智は、内心ホッとしながらそう言った。
「申し訳ない」奥でこもってたもんでね」
「村田さんですね。ハイ、これ、あ、あれっ」
智は荷物を渡しながら、ちょっと驚いて言った。そして顔を上げた村田の顔を見て尋ねた。
「あのう、ひょっとして、彫刻家の、ムラタシュウヘイさんですか？ 」
「ええ、そうですが」
村田はいたって丁寧に答える。
「あ、実はオレ、大学で彫刻やってるんですけど、こっちへ休みで帰ってくる直前に、大学の資料室で、
ムラタさんの本、見たんスよ。で、うわー、これ、すっげぇいいなぁって、思っててェ、で、その時に本の一等
最後に載ってた写真で、顔見てから。ムラタシュウヘイ、村田修平、そうか、そうっすよね、へーえ」
智は「偶然」にただただ感心してそう言った。
「キミは彫刻やってるのか、ふうん」
判を捺した紙を智に戻しながら、村田は上目遣いに彼を見た。
「ええ、森川桂作先生についてます。でも、まぁ、今年の夏休みはもうバイトだけですけどね」
智はキラキラとした瞳で答えた。眼の光がとてもシャープだ。そして、その眼に負けないくらいに、口調も
なかなか歯切れがよかった。村田の表情が急に柔らかくなった。
「いつまでバイトなの？ 」
「ああ、えーっと今週一杯のつもりです」
「バイトが終わったら？ 」
「東京へ戻ろうかって、思ってます。何だかオレ、こっちにいると、もうボヤーッてしてしまって-------」
「じゃあ、来週から、ボクの仕事を手伝ってもらえないか、ねえ」
そう言って、村田はニヤッと笑った。
「手伝う？ オ、 オレでいいんスか？ ウワーッ、ラッキー、あ、オレ、何でもしますよ。
体だけは自信ありますから」
智はそう言って、白い歯を見せて笑った。
「うーん、しっかりした体だな」
彫刻家は目を細めて智を見た。シャツは肩のところまでたくしあげられ、そこからよく陽に灼けて、
二十歳そこそこにしてはがっしりとした腕が伸びている。胸もしっかり筋肉が発達していて、無駄な
ものは何ひとつないようだった。そして、その発達した上半身をがっちりと固め、支えるよな腰。それから
その流れは、やや太めかとも思えたけれど、さらに足に向かって続いていた。
シャツの上からではあったが、彫刻家は長年いくつもの対象を見てきたその眼で、彼のプロポーションを
すばやく計算していた。
（こいつはいい。） 彫刻家は、改めて思った。
「実は手伝いっていうのは、そんな雑用なんかじゃないんだ。 今度頼まれている作品のモデルになって欲しい、
って思ってね。」
「へ？ 」智は目を丸くした。
「オ、オレがモデル？ で、でも、モデルなんて------」
「ああ、そんなに難しく考えることは要らないよ。 イメージは、もうあるんだが、それを具体的にどう生かすか、
っていうところで困ってたんでね。 どう？ 頼まれてくれる？ 」
「ホントにオレみたいなんで、いいんスか？ ええ、もちろんオレでよければ-------でもなぁ-----」
「うん？ 」
「いや、どうやって作るのか、その現場のほうが見たいから」
「ああ、じゃあ泊まりこんだらいいじゃないか。 なら、ゆっくり話もできるし。いつだってはじめられる。
それにいろいろ説明もしてあげられるし、ね。 えーっと、名前は-----？」
「あ、スミマセン。オレ、ヤマノサトシ、山野智って言います。 でも、ホント、いいんスか？ 」
「いや、だってボクの方が頼んでいるんだから」
彫刻家はわざと快活そうな声でにこやかにそう言った。
「あ、ハイ、分かりました。なんか、本当にいいんスかねぇ。 うわぁ、スッゲエ。 今年の夏休みって
なんか後半スゴイことになりそうだな。」
（スゴイこと、まぁ、そうだな。） 彫刻家は、その言葉を聞きながら、そう思った。
智はそう言うと、ニコニコした表情で、村田と来週の日程を打ち合わせて帰っていった。
一週間後の夕方、智は再び彫刻家の家にやってきた。
「今、ちょうどメシの支度をしててね。そうそう紹介しておこう。彼が俺の助手兼雑用係のヨシオだ。
で、こっちは-------」
「あ、オレ、サトシって言います。ヨロシクお願いします」
「ああ」ヨシオは面倒臭いような恥ずかしいような表情で、小さく口の中で返事をしたっきりだった。
智はちらっとしか顔を見なかった。幾つくらいだろう。パッと見たら３５くらいには見えたけど、よく見たら
まだ２０代のような気もした。そして後はまた流し台に向かって、黙々と料理の支度をはじめた。
「こうやってね、いつも二人でこの時間くらいから支度してるんだ。まぁ、たまには誰か客の来ることも
あるけどね。」
そう言って村田はニヤッと笑い、テーブルの上のジャックダニエルをグラスに注いで、少し飲んだ。
「村田さん、奥さんは--------」智が訊く。
「一人だよ。仕事してたら、まぁ、時間とかメチャメチャだしねぇ、御健全な生活なんて望めないし。大抵
仕事をはじめるのは、夜中からだからねぇ。夜中から朝にかけて仕事をしてる。 で、昼間は寝る。
ここでは、そういうのが規則だ。」と、断定口調で村田はそう言った。
やがて三人の晩餐がはじまった。さまざまな野菜や肉の炒め物とかが中心で、手間はあまりかかっては
いなかったけど、このヨシオとかいう雑用係の腕は、なかなかのものだった。しかし、彼はほとんど話に
入ってこず、ずっと彫刻家と智だけが話をする形になっていた。
「ヨシオさんは、あんまり話しないんスね」
智が、ヨシオにそう言っても、「ああ、こいつ、無口だし、話すの苦手だから」と彫刻家がかわりに
答えるばかりだった。
「で、早速なんだけど、実は仕事の日程の関係があるから、今晩からはじめたい、
って思うんだ。いいかな？ 」と、村田は言った。
智は、半分酒に酔った勢いで「ええ、いいっスよ。今日からでも、なんだったら、今からでも-------」と紅い顔で
元気よく答えた。
「まぁ、じゃあ酒はあんまり勧めないほうが、いいかもね。」と村田は言ったが、その実、次々と智に酒を勧めて
いった。
「この日本酒、どこのですか？ 辛口でなかなかいいっスね。ああ、オレ、もう大丈夫、大丈夫っス
から、まっかせといてくださいよ。」
そんな智を彫刻家は静かな微笑みを浮かべて見ていた。一方、ヨシオは相変わらず無表情のままだった。
「今晩、じゃあ予定通りに」 彫刻家は、今までの優しく落ち着いたトーンとは全く違うそれで、
ヨシオにそう言っていた。
ヨシオははじめて少しだけ笑うと、「承知しました」と、答えた。
２．
ぼんやりとした中で、少し意識が目醒める。何か匂いがしている。あまりかいだことのない、線香？
そんなものじゃない。でも、鼻から頭の中に、もやーっと入ってくる。鼻だけじゃない。体の奥底から
突き上げてくるような、体で感じる匂い。植物的な、っていうんじゃなくて、何か動物の体臭のような。
何だか体が軽くなった感じだ。そう、服も何もつけていない。オレの皮膚の上を、空気が微かに動いて
いるのが感じられる。
あれ？-------
智は目を醒ました。起きあがろ、あ、れ？
体が動かない。
「目が醒めたかい？ 」彫刻家は、ニヤニヤ笑って尋ねる。そして智の顔をのぞき込む。
「気分はどうかな？ 」
「え、っと、え、あ」
智は全て服を脱がされ、大の字に固定されて、板の間に寝かされていた。 室内は智の体に向けて
だけ、ライトが当てられている。周囲はボンヤリと薄暗くて、ほとんど何も見えない。
「モデル、よろしくね。」村田が智の頭の真近まで顔を持ってきて、そう言う。
「これ、きついっスよ。オレ、動きませんから、この固定してる紐、外してもらえませんか？ 」
「キミは、しゃべっちゃだめだ。ボクの言うとおりにすればいいんだから。」彫刻家は、そう言って智の腰の辺りを
平手で叩いた。
「イッテエ、何だよォ！ 」智は大声で抗議した。
「まぁ、大声で叫ぶがいいさ。ここはね、蔵を改造した建物だからねぇ。それにこんな山の中の、それも蔵の中で
少々騒いだとしても、誰も気づきはしない。フン」
智は身動きできずに、ただただ村田を睨みつけている。
「元気がいいよねぇ。え、まぁ、いつまでその元気が持つか、だけどねぇ」
「やかましい、放せよ、オイ、放せ」
「あーあーあ。ったく、夜中だっていうのに、ウルサイねぇ。ヨシオ、ヨシオ、テープ」
「ハイ」
村田は智の口に荷造り用の布製のガムテープを貼り付けた。
「さ、そろそろはじめるとしますか。へっへっへっ。やっぱり二十歳っていうのは、違うなぁ。
肌がつややかで、張り、があってねぇ。で、ホラ、この体臭が、ちょっと青っぽくって、今焚いてる
この麝香とよく合うよねぇ」
村田の指が、智の体を撫で回す。智は首を振り、体を捩ってそうはさせないようにする。けれども
体は固定されていて全く動けず、村田の意のままにしかならない。
「体も鍛えられていて、無駄な肉がない。こりゃあ、絶品だなあ」うれしそうな声で、村田はそう言った。
「さあて、どこから取りかかるとするかな」 智は凍ったようなまなざしで、相手を見る。
「いいか、キミは奴隷になるんだよ。男が大好きな、男の体なしではいられない、セックスの奴隷にね。
ヒーヒー言ってなぁ、泣きながら、うれしがるのさ。なぁ、もうじき自分からねぇ、くれくれ、ってせがんで
くるようになるんだよ。」
（バカか、こいつは）と、その時はまだ智もそう思っていた。（今に見てろ、そのうち、こいつを何とかして
外したら-----）と、考えることもできたのだった。
「何だね。その反抗的な目は。まぁ、はじめは誰だって、そうさ。けどね、そのうち変っていくのさ。自分から
もっと、もっと、ってねぇ。せがむようになるのさ。見てるがいいさ。」
村田はそう言って冷たく笑った。
３.
「さてと、モデルはやっぱりきれいにしなくちゃねぇ」
村田はシェービング・クリームのチューブで、智の頬を軽く叩く。
「ホラ、ヨシオ、塗れ」
ヨシオは智の腰の辺りに座り込むと、ペニスの周囲の毛にシェービング・クリームを塗っていった。
「意外と毛深いんだねぇ。ヨシオ、下ばかりじゃなくて、こっちもな」
村田はそう言いながら、腋のほうを顎で指す。
「どれ、ふぅん、おやおや、そうそうこの匂いだ。この匂い。うん、うん。ボクはこの匂いが大好きでねぇ。
ああ、いい。ハアァ」
村田はそう言いながら、智の腋に顔を押し付けて、舌を軽く当てた。毛に当たるか、当たらないか
の微妙な加減で、舌はゆっくりと腋を這いまわる。「ああ、たまんない。ああ、これはいい、ああ------」
その間にヨシオはクリームを塗り終えていた。そうして今度は、ヒゲ剃り用の剃刀で、ゆっくりと慎重に
智の毛を剃っていった。
村田の吐く息遣いと、ヨシオの剃刀を使うなまなましい音が部屋の中を充たしていた。
「ホーラ、動くと危ないよ。ウン？」腋をゆっくりなぞっていた村田が、まだ動こうとしている智に猫撫で声
でそう言った。
智は、何度も何度も思い出したように、体を動かそうともがいた。しかし、ヨシオが、
剃刀を持っていることもあって、体を固くして動かなくなった。目を閉じ、必死に歯を食いしばっているのだろう。
顔が紅潮して、小刻みに揺れている。
「おや、何か我慢しているのかい？何を我慢することがあるのかねぇ。あーん、ホラ、気持ちいいだろ？ うん？」
そう言いながら、乳首をぎゅっとつねりあげる。思わず智は顔をしかめて痛さに耐えようとする。
「オオッ、いいねぇ。ホラ、どうだ？ 感じるだろ、なぁ。下だって大きくしてるじゃないか、え？ 」
ヨシオが智のペニスの周辺の毛を丁寧に剃っていく。左手を当てて、充分に皮膚を押さえた上のところに
少しずつ剃刀の刃があたっていく。
智のペニスは、毛を剃られるたびに、少しずつ江レクトしてくる。ピクッ、ピクッ、とそれは血の流れ、心臓の
動きを表しているかのように動く。そしてやがてそれは別の生き物のように形を変え、パツンパツンと鈍い音を
たてて、毛のなくなって青くなった下腹部の辺りを打ちはじめているのだった。
「ホラ、見るがいい。イヤだとか何とか言ってたけど、キミ、やっぱり気持ちがいいんでしょ？ こんなに
でかくしちゃって、ねぇ」
ヨシオが、すっかり剃り終わったペニスの周囲から、尻の穴の辺りまでをタオルで拭くと、青々とした剃りあと
の中心に、ペニスがそそり立つばかりになった。
「ふうん、立派なもの、持ってるじゃないの、キミ」
「どうします？ 」 ヨシオが冷たい声で尋ねる。
「一発、イカせてみるとするか」
「気持ちよくさせるんですか？ なあんだ」
「このかわいい顔が、どんなふうにイクのか見たいからねぇ。--------ホラ、こうすると、見てごらんよ。
もう感じてきてる。どうだ、ホラ、ここは感じるだろ」
村田が智の体を、爪の先でゆっくりと撫で上げる。ヨシオはペニスをしごきはじめる。智は時々
痙攣したように、体を震わせ、捩る。けれども、二人はそんなことは全く構わずに、それぞれ智への
行為を止めようとはしない。村田は、時には舌の先で、ちょろちょろと智の体の感じやすそうな場所を
つついてみる。
「どうだい、乳首は？ 感じないか？ 」
智は、今までに感じたこともなかった刺激が、次々と自分を襲ってくることに、何としても堪えるのが
精一杯だった。どうしても、こいつらの前で射精するのだけは、したくないと思った。しかし、そうは思って
いても、何もできない。そしてそんな気持ちなどいとも簡単に壊し去ってしまうような刺激が、次から次へと
智の体を襲った。彼は次第に考えるゆとりをなくしていった。
「ホラ、サトシくん、さっきはイヤだ、とか言ってたけど、どうなってるの？ これは」
村田はヨシオの手をの方を見ながら、智に囁いた。ヨシオの握っている智のペニスの先からは、
透明な汁がじわりじわりと出てきていた。智も最初は、何とかしなければ、とは思っていた。いろいろと
他の事を考えたり、気を散らそうとした。けれども、後から後からさまざまな箇所を愛撫する二人の責め
にあっては、そうした冷静さを失ってしまっていた。智の体は、そうした新しい刺激にあって、ピクッ、ピクッと
大きく痙攣するようになっていた。そうして歯を食いしばって強く目を閉じていた表情が、少しずつ
変化さえしはじめていたのだった。
「ああっ」智は、もう何も考えられなくなっていた。背中を次々と波のような刺激が、何度も何度も
駆け上がっていった。
そうして無意識のうちに、ヨシオのピストン運動に合わせて、腰を振りはじめていた。
「ほおら、気持ちいいだろ。ええ？ どうなんだ」村田がさらに続けた。
ヨシオが智のペニスをくわえた。智はこらえきれずに、手をバタバタさせようともがこうとした。が、紐があって動けない。
智の体が大きく反り返った。
村田は、さっき智の口に貼ったテープを一気に大きな音をたててはがした。智からは、もう抗議の声は聞こえて
こなかった。口はただ大きな息をするためだけに開けられていた。ハァハァという息の中から、時折快感に
よがる声が交じる。
「うん？ 気持ちいいの？」
「ハアッ-----アウッ」
智は眉間に皺を寄せて、もう二人の為すがままになってしまっていた。
「もっと、欲しい？」 村田が聞く。
「アアッ、アッ、アッ、もっと、も、っと、イイ、イイ」
智は堪えきれず、上ずった声をあげて反応する。
「アアッ、アッ、アッ、アアッ、ア、アウッ、ア オアッ、ア、イクッ、ア、ア、アアッ」
その声とともに智のペニスの先からザーメンが勢いよく発射された。その白濁した飛沫は、
智の体を通り越して、彼の顔よりもまだその先まで、飛んでいた。
４
「ハアハアハア」
智は肩で息をしている。陽に灼けた肌に汗が全身をベールのように覆っていた。
「さて、じゃあサトシくん、次いってみるかい？ 」 村田はまるで独り言のように、そうつぶやいた。
「あばれちゃ、いけませんねぇ。でも、またヒィヒィ言わせてあげるからねぇ」
ヨシオは手の紐を外し、そこに手錠をかけた。そして、足の方の紐を少し緩めた。
「チクショウ、何だヨォ」射精して醒めた智がまた叫ぶ。
「おやおや、復活したのかね。え、元気がいいじゃないか。なぁ、若いっていいねぇ。スタミナがあってさ。
１回や２回なんて数のうちに入らないんだろう？ 」
そう言いながら、村田はヨシオに目で合図をする。
「ガッタガタ騒ぐなよ、なぁ」ヨシオが智の足に再び手をかけた瞬間、智の動かした足が、ヨシオの
顔にまともに当たった。
「なかなか元気があるじゃねえか、なぁ」
ヨシオは智のペニスを無造作に掴む。
「アウッ、イ、イテェ、ヤ、ヤメロォ、この野郎」
「ウソつけぇ、好きなんだろ。こうされるのがよぉ。え、なぁ」
ヨシオが掠れた声で智を見下ろしながら言う。「ホラ、じっとしてろ」
村田は、奥にあった３０インチのテレビのモニターにスイッチを入れた。
「ホラ、どうかな」
再生装置のスイッチがリモコンで入れられ、画面には、智が大の字でよがっている光景が
映し出された。ついさっきの光景が、真上のアングルから。「イイ、イイ、もっと、ってねぇ、言って
るよなぁ。なぁ、これがキミの本心なんだよ。イヤだ、イヤだ、とか最初は言ってたくせに、見なさいよ。
ほら腰まで振ってるじゃないか。やっぱりキミはこれが大好きなのさ。」
「ヤメロォ！」智はヨシオに向かって唾を吐いた。それは、まともにヨシオの顔にかかった。
ヨシオは無表情に智を見下ろし、もう一度、その手の握力を強くさせた。
「ああっ、ヤ、ヤメロよォ。オ、オレをこんなにして、な、何がうれしいんだよォ」
掠れた声で智が叫ぶ。
「いいねぇ、苦しい？ ふーん、苦しむ若い子、ってそそるねぇ」
村田は満面に笑みを浮かべながらそう言った。
「ボクはねぇ、サトシくんぐらいの頃は、ものすごく太ってたのさ。９８キロくらいあってねぇ。１７３センチで。
皆から暑苦しいから近くに来るな、とか、ノロマ、とかグズとか言われ続けてね。誰も相手になんかして
くれなかったのさ。大学の中とか歩いていても、街を歩いても、スマートな連中は、もうそれだけでさまに
なってたなぁ、女の子とか連れて。けど、ボクは、村田くんは、いいお友達なのよね、って言われて。
で、後からあいつは脂ぎっててヤー、とか陰で言ってるのが聞こえてきて。人は、きっちりみかけだけで
判断するんだよなぁ、って。ま、他人っていうのは、どうせその程度のものさ、って教えてくれた
いい経験だったけどねぇ。 まぁ、だから普通にしてるだけで、さわやかそうな奴なんか見ると、
イジメてやりたい欲望がムクムクとしてきちゃうんだよなぁ。フウッ、ホラ、見てみろ。もうすぐだよ」
画面では、大きく口を開けて体を投げ出すようにして、腰を激しく振っている智が映っている。
「ああっ、イクッ！ 」智は目を閉じて、頭を激しく左右に振る。
「な、サトシくんは、こうやってイクんだよ。なぁ」
そう言って村田は、リモコンでTVのモニターの画面を消した。
「じゃあ、ヨシオ」
「オラオラ、暴れるなよォ、」手荒くヨシオは、智の体を反転させる。ヨシオは暴れまわろうとする
智を力ずくで動かし、四つんばいにさせる。「ホラ、ケツ上げるんだよ。ケツを。」
「ヨシオ、その言い方は下品だなぁ。」村田は笑いながら言う。「ほお、きれいな穴だねえ。じゃあ、
中のほうもきれいにするとしようかねえ」
村田は高く持ち上げられた智の尻にクリームを塗りこむ。「アッ、アアッ、アハッ」智は村田の芸術家らしい
細い指が、そこを念入りになで上げるたびに、体を震わせて声を上げた。
「じゃあ、一本目。」注射管を差し込む。
「アアッ、イ、痛え、な、何をするんだよォ、ア、ヤ、ヤメロッ」
「ったくウルセエなぁ、またガムテープ貼ってやろうか？ 今度は、口と鼻によォ」加工用のナイフを
智の頬にピタピタと当てながら、ヨシオが言う。その間も、もちろん村田は「注入」を続けている。
２本目が終わり、３本目とグリセリン液が注入されていく。
「ハ、アアッ、ア、アアッ」
しばらく間を置いて猛烈な痛みが、智の下腹部を襲った。
「アウッ、アウッ、ウッ、ハアッ、アッ、アッ！ 」 智は突き出した尻を振りながら、どんどん
激しくなってくる痛みに堪えようとする。最初は小さかった核が、下腹部でどんどん転がりながら
大きさを増していき、それが、彼の腹を内側からグイグイ押してくる。
歯を食いしばり、智も何とか最悪の事態だけは、避けようとは思っていたが、下腹部の痛みは、
波の広がりのように、強弱を繰り返しながら、どんどん強く大きくなっていった。
「あっ、ああっ、アッ！ 」こらえきれずに智の口から声が漏れる。
「苦しい？ 出せばいいよ。 ホラ、 出しなさい。 すぐに楽になるよ」
智はその声が全く聞こえていないかのように、ただただ、呻き声を上げながら、尻を動かしている。
「ホラホラ、もっと動かしてやろうか、え、どうだ？ 」
ヨシオが、その尻の動きをさらに加速させるように、足で智の腰の辺りを踏みつけ、激しく揺り動かす。
「ア、アッ、アッ、アアッ、ハアッ」
「出せ出せ、我慢しねえで、ホラよっ」 ヨシオが洗面器を智の尻に持っていった。ほとんど同時だった。
「アアッ、アッ、ハアッ-------」
そう叫んで智は腹の中に溜まっていたものを、一気に放出したのだった。
５
「さぁて、きれいになったところで、いよいよはじめるとするか」
村田は指にさっきのクリームを取り、智のアヌスにもう一度、指づかいも滑らかに塗っていく。
「ほおら、力を抜いて。いいか？ リラックス、リラックス。ほら」 そう言いながら村田は智の穴に
ディルドを差し込む。
「ウウッ、イ、痛い、ハアッ、や、やめろ、やめてくれ--------」
「今だけだよ、痛いのは。まだ最初だからねぇ。そのうち良くなってくるからね。ゆっくり、入れて
行かないと、ねぇ。壊れちゃ、大変だ。」
「イ、痛い、ああ、イ、痛い--------」智は顔をのけぞらせて喘いでいる。かすれた声が漏れる。
「ホラ、全部入ったよ。どうだ。くわえこんじゃったんだ。なぁ、スケベだよねぇ。フフフ。サトシくんは。」
「ああっ、き、切れそう。イ、痛い。やめろォ、や、やめてくれ-------」
「じゃあ、ゆっくり動かすからね。」
ディルドは、ジュルッという音をたてて、少し外に出される。智は少し痛みが遠のいたのか、大きな息を
する。「ホラ、また、行くよ。」
「アウッ！」
村田はゆっくりピストン運動にかかる。智は呻き声を上げる。無造作に開けられた口許から、よだれが糸を
ひいて垂れる。
「ほおら、だんだん良くなってきただろう、なぁ？」 そう言いながら、村田はヨシオに目で合図する。
「こっちはどうだ？」ヨシオがビンビンに勃っている、智のペニスを掴んだ。「ホラ、やっぱりこんなにでかく
しやがって。ああん？ 」ヨシオが耳許で囁く。「気持ちいいんだろ？ ほらケツ振ってみろ。もっと
気持ちよくなってくるぜ。」
「アアン、アアン、アア--------」
智の漏らす声が、次第に湿りを帯びてくる。
「気持ちいいだろ？ なぁ、もっと尻を上げてごらんよ。ああ、そうだそうだ。この毛の感じ、すごくセクシーだねぇ」
村田がやさしく智に言う。
「アアン、アアン、い、痛い。」
「でも、ホラ気持ちよくなって来ただろ。どうなんだ？」村田はそう言いながら、ピストン運動を激しくする。
「アアッ、アアン、アアン、アウッ！」
智は、女のような声をあげはじめる。
「どうだい。もっと欲しいのか？」
「アアン、アアン、ア、アッ、アアン。」
「ほら、いいねぇ。もっと、もっと、そうそう振るんだよ。セクシーだよ。すごくいい。ホラ、どうだ？
気持ちいいんだろ？うん？」
「アアッ、アッ、アッ、ア！」ディルドと一緒に、今度は村田の指が、智のアヌスの周囲のデリケートな
部分を撫で回していく。そのたびに、智はまるで女のような声を上げて、哭くようによがり声をあげつづける
のだった。そうして、智の性感帯を確実に押さえた二人の責めは、再び智の理性を溶かしていった。
「ア、ハアッ、ん、アアッ、あ、はぁん。」
「もっと欲しいのか？」
尻を振る智に、ヨシオが尋ねる。「ホラ、これはラッシュだ。吸ってみろ。これを吸うとな、もっともっと気持ちよく
なるんだ」
そう言いながら、ヨシオは智の鼻先に茶色の小瓶をあてがった。
智は、ただただ村田とヨシオの為すがままに、尻を持ち上げ、腰を振り、大きな声を上げてよがり続けている。
そんな智を村田は冷たく笑いながら見ているのだった。
「アアッ！」智は顔をのけぞらせて叫んだ。
「ハアッ、アー、アアッ！だ、ダメ、！い、イクゥ！ 」
そうして、ヨシオの手の間から、白濁した液体がポタッポタッ、と重い音をたてて
床にしたたり落ちたのだった。
６
智が、この土蔵を改造した、彫刻家村田修平のアトリエにやってきて三日がたった。
しかし、人里離れた山かげの一軒屋では、時間の流れは全く止まったかのように、
ゆるやかにしか流れてはいかなかった。
この間、何度か智の前に食べ物が置かれた。それもはじめは、まだ、「ケッ、いらねえよ。」
と拒否する元気もあった。
しかし、村田とヨシオの責めは執拗だった。二人は交代で休みを取りながら、智をずっと責め続けた。
いつの間にか、智は反抗する言葉も忘れ、目の前に食事が置かれても、ぼんやりとそれを見る
ことだけしかできなくなっていた。
最初は細かったディルドも、次第に太いものに取り替えられていった。村田は智に、バックに挿入する
ディルドを、先に口で咥えさせた。「ほぉら、よーく舐めとかなくっちゃ、なぁ。次に下で咥えた時に
痛いぞ。なぁ。」
智は、それでもまだ、うわごとのように時々拒絶の反応を示すことはあった。しかし、ほとんど間断なく
続けられる責めのせいで、もう自分がどうなっているのかさえ、分からなくなってしまっていた。
バックと口にはいつもディルドが差し込まれていて、それが普通、という状態が、もうずっと続いていた。
村田とヨシオは、智の反応を見ながら、じわじわと責めていった。あるときは仰向けにして、両足で紐を
持ち上げたままで、身体中を製図用の鳥の羽のブラシで、やわやわと撫でていった。
智は、うつろな表情で、よがり声をあげ続けた。もう、一体何度目の責めだっただろう。 もうとっくに
智の記憶は壊れてしまっていた。
「ホラ、どうだね。」
村田ははじめに少しディルドを動かしただけだった。智は、いつの間にかひとりでに腰を振って、
自ら快感を貪るようになっていた。「気持ち、いいだろう？」という村田の声に、
「アアッ、感じる。気持ちイイ、モットォ、もっと、、もっと突いて。アアッ、も、もっとぉ！ 」
と反応し、みだらな声を挙げるようになっていった。そして更に強く、更に深く、更に激しく腰を動かしては、
快感の声を上げ続けるのだった。
「そろそろ完成ですか？」ヨシオが訊く。
「そうだねぇ。」村田が満面の笑みをたたえて答える。
「なかなか絶品じゃないか。ねぇ。身体もいいし、よがってる時の声も、表情もいいねぇ。ホラ、見てみなさい。
もうくれくれ、って実にうれしそうじゃないか」
「しばらく使えそうですね。」
「いや。」
「どうしてです？」
「もう用はないさ。すっかり下品になってしまったあの表情。ちっともきれいなんかじゃない。ボクはね、ボクの２０代
ってやつはみじめで汚らしかった。そう、だからボクとおんなじ経験を彼にもさせてやりたくてねぇ。だから、彼に
ボクがしたかったことはすべて終わったんだ。最初はイヤだイヤだ、って叫んでいたのが、フン、今ではあんな調子で
さぁ、ホラ見てみなさい。まぁ、人間なんて一皮むいたらみんなこの程度のものかもしれんが、ねぇ。そんなことは
ボクだって知ってる。分かってるつもりだよ。けど、見なさい。ホラ、さっきからずっと腰を振ってくれくれ、って、ねぇ。
ボクはあんなの見たくないんだよ。」
村田はさっきとは全く違った顔つきでそう言った。
「じゃあ、どうするんです？」
「まぁ、好きなようにさせるさ。どうせもう反抗する気力なんて、残っちゃいないだろうから、ねぇ。まぁ、ボクも
もうこれで終わりにしようか、って思っているけどねぇ」
「先生やるんですか？」
「やる、なんてそんな言い方は下品だねぇ。ボクは彼に対して封印するのさ。
「ホラ、起きろよ」
ヨシオが横たわっている智の頬を叩いた。
智は四肢をすっかり投げ出して、深く眠っていた。
「ホラ、ご主人様が、可愛がってくれるとさ」 そう言いながら、ヨシオが智の乳首をつまみあげると、彼は
反射的によがり声をあげた。
「目を醒まさなくってもいい。まぁ、そのうちひとりでに醒ますだろうよ」 ヨシオは、智をうつ伏せにし、尻を
高々と持ち上げさせた。
智の臀部は、まるでトルソーのように滑らかで、かつ張りがあった。ライトに照らし出される、そのまだ初々しい
双丘は、結実して熟すまで、誰の手がふれることをも拒む白桃のようでもあった。
しかし、ヨシオの手が、おもむろにその白い双丘を押し開くと、そこには柔毛に縁取られた、赤い口が息づいて
いた。それは、赤く淫らで、まるで爆ぜた石榴のようだった。
しかもその口は、何かをねだるかのように、パクパクとしきりに口を開閉していた。
村田は、チェッ！、と舌打ちした。ヨシオには淫らなこの口も、村田には、もう何の興味もないらしい。
クリームを尻によくすりこむと、ヨシオは智から離れた。そして今度は全裸の彫刻家と交代した。村田は
全身を使う仕事のせいで、今でもその年齢にしてはしまった体つきを維持していた。けれども、その皮膚の艶や
張りにおいては、まだ20歳の智にとうていかなわなかった。
村田は、じわりと自分のペニスを智のアヌスに挿入した。そして、ゆっくりと腰を動かしはじめる。
智はもう半ば無意識のうちに、それに合わせて腰を動かしはじめていた。
「ウウッ、ウーッ、ウゥーッ」
低く唸るように、智が声を漏らす。ヨシオが耳許で囁く。
「ホラ、気がついたか？ どうだ、気持ちいいだろ、え？ 」
「アアッ、イイッ、イイッ、アウッ！ 」
智は村田に合わせるように、いや村田よりもっと激しく腰を振っている。村田は、その智の腰を
平手で叩き、一度ペニスを抜くと、今度は智の体を回転させ、仰向けにしてもう一度挿入した。
「アアッ、ハアッ、ハアッ、イイッ、も、もっとぉ、アア、イイッ！ あぅふっ、アアッ」
そのときヨシオが部屋の照明を消してロウソクをつけた。平面的なライトの光と異なる、陰翳が
智の身体をゆらゆらと照らし出した。
大きな声をあげてよがっている智の身体の上へロウソクを持ってくると、ヨシオは、そのままロウソクを
水平に倒した。
ポタポタと半透明になったロウが、灼けた筋肉質の智の身体の上に落ちていく。
「アッ、ア、熱い、アアッ、アアッ、アアッ、イイ、イイ、気持ちイイ」
智はロウソクの熱さも気にならないのか、ずっとよがり続けている。
村田はそんな智を見ながら彼の中に再び、深く挿入していくのだった。
まるで自分の作品を叩き潰すかのように。
（終わり）